- ・排卵誘発剤(内服薬・注射薬)により卵巣を刺激し排卵を起こし、妊娠率を上げる方法です。
- ・排卵誘発剤にはクロミッド(一般名:クロミフェン)、フェマーラ(一般名:レトロゾール)、セキソビッド(一般名:シクロフェニル)などの内服薬や、フォリルモンP(精製-FSH:卵胞刺激ホルモン)などの注射薬があります。
- ・通常、排卵誘発剤は、排卵障害に使用しますが、排卵障害が無くても、タイミング法、原因不明不妊のstep up、人工授精(AIH)の妊娠率を高めるためにも使用されます。
- ・現状では主に人工授精の妊娠率を高めるために使用されています。
- ・排卵誘発剤には黄体機能を高め、基礎体温を安定させる作用もあります。
- ・成熟卵胞が一定の大きさに達したら、LH(黄体形成ホルモン)作用があり、排卵を誘起するHCG5000F(尿由来hCG:ヒト絨毛性ゴナドトロピン)筋注、オビドレル(遺伝子組換え型hCG)自己注射、ブセレリン(GnRHアゴニスト)点鼻薬を投与して、36時間前後に排卵を調節する場合もあります。
- ・排卵直前の超音波検査で16mm以上の成熟卵胞が3〜4個以上ある場合、多胎防止のため、その周期はキャンセル周期となります。
排卵誘発法
排卵誘発法*
診療費用について
- ・以下の診療費用(再診保険3割負担:2023年10月1日現在)は、同一周期にすべての検査を実施した場合の一例で、実際の費用と異なる場合があります。
- ・また、同一周期で、前回の来院時と全く同じ検査・治療を実施した場合でも、同一周期における検査の実施回数、各種加算・判断料などの相違により、当日の費用が前回来院時の費用と異なる場合がありますのでご承知おき下さい。
排卵誘発法のスケジュール(月経周期28日型の場合)*
月経周期1~5日前後(月経中)
治療方針の決定
・原則、月経周期1~5日に来院して頂き、今周期の排卵誘発剤の使用の有無、使用薬剤の種類を決定します。
ホルモン検査(採血)
・LH(黄体形成ホルモン), FSH(卵胞刺激ホルモン),E2(卵胞ホルモン)検査実施。
経腟超音波検査(以下、超音波検査)(内診)
・必要に応じて残存卵胞などのチェックをすることがあります。
排卵誘発剤(内服薬)処方の場合
・クロミッド:月経周期3~5日から1日1~2錠、5日間が原則。
・フェマーラ:月経周期3~5日から1日1~2錠、5日間が原則。
・セキソビッド:月経周期3~5日から1日4~6錠、7~10日間が原則。
排卵誘発剤(注射薬)筋注の場合
・フォリルモンP75:月経周期3~5日から計1~5回、反応により回数決定。
費用
①再診料+(LH・FSH・E2)検査 | ¥2,150 |
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②内服薬処方の場合:①+処方費 | ¥2,360+薬局費用 |
③注射薬注射の場合:①+注射費 | ¥2,630(フォリルモンP75使用) |
月経周期5~8日(月経中~月経終了)
※注射薬使用の場合に必要に応じて来院
・超音波検査で卵巣の反応をチェックし、追加投与の要否を決定します。
費用
①再診料+超音波検査 | ¥1,810 |
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②注射薬注射の場合:①+注射費 | ¥2,290(フォリルモンP75使用) |
月経周期9~12日(排卵前)
超音波検査(内診)
- ・卵胞径・子宮内膜厚測定し、卵胞径20mm以上で性交渉を開始します。
- ・卵胞径20mmおよび尿中LH検査(-)の時点で、HCG5000F筋注、オビドレル自己注射、ブセレリン点鼻薬を投与して、36時間前後に排卵を調節する場合もあります。
尿中LH検査(採尿)
- ・超音波検査で卵胞径が16~17mmになった時点で検査を開始します。
- ・来院できない場合は月経開始日11日から、または、通常の排卵日2~3日前から検査を開始します。
- ・尿中LH検査が陽性になった場合、その日に性交渉することが重要です。可能であれば、排卵日まで1~2日ごとに性交渉を行った法が妊娠率は上昇します。可能な範囲でトライして下さい。
- ・尿中LH検査は、自宅で検査試薬を使用するか、来院して検査を実施する事も可能です。
費用
①再診料+超音波検査1回目+子宮頸管粘液検査 | ¥2,260 |
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②尿中LH検査実施の場合:①+尿中LH検査 | ¥2,480 |
③HCG5000F筋注実施の場合:①+尿中LH検査+注射費 | ¥3,080 |
④オビドレル自己注射実施の場合:①+尿中LH検査+薬剤費+(a)または(a+b) a.在宅自己注射指導管理料(月1回) b.導入初期加算(開始3か月間・月1回) 注射開始から3か月(暦月)まで:①+尿中LH検査+薬剤費+(a+b) |
¥7,040 |
注射開始から4か月(暦月)以降:①+尿中LH検査+薬剤費+(a) | ¥5,300 |
⑤ブセレリン点鼻薬・処方の場合:①+※点鼻薬処方費(¥5,360:自費) ※点鼻薬は6周期以上使用可能 |
¥7,870 |
月経周期15~17日前後(排卵後)
超音波検査(内診)
・超音波検査で排卵のチェック、子宮内膜厚の測定を実施します。
フーナーテスト(性交後試験)(内診)
・子宮頸管内への精子上昇のチェックを必要に応じて実施します。
費用
①再診料+超音波検査2回目 | ¥1,650 |
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②フーナーテストを実施した場合:①+フーナーテスト | ¥1,830 |
③黄体ホルモン剤処方の場合:①+処方費 | ¥1,860+薬局費用 |
月経周期20~22日前後(黄体期中期)
黄体機能検査(採血)
・プロゲステロン(黄体ホルモン)の採血検査を実施します。
費用
①再診料+プロゲステロン検査 | ¥930 |
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②黄体ホルモン剤処方の場合:①+処方費 | ¥1,790+薬局費用 |
超音波検査の回数制限
- ・HCG5000F・オビドレル単独使用時:同一周期3回目以降は自費(¥3,300)
- ・排卵誘発剤(内服薬、注射薬)使用時:同一周期4回目以降は自費(¥3,300)
排卵誘発法1周期あたりの通院回数
・1周期あたり通院回数は3~4回(内服薬)、3~5回(注射薬)前後です。
- ①月経周期1~5日前後:ホルモン検査、今周期の治療方針の説明。
- ②月経周期5~8日前後:超音波検査で卵胞径測定。※注射薬使用の場合。
- ③月経周期9~12日前後:超音波検査で卵胞径測定し、排卵日の予測。
- ④月経周期15~17日前後:超音波検査で排卵確認、子宮内膜厚を測定。
- ⑤月経周期20~22日前後:黄体ホルモン検査で黄体機能の評価。
・通院回数は、個々の皆様の通院可能状況などで異なります。
排卵誘発剤の種類*
1. クロミッド(一般名:クロミフェン)(内服薬)
・最も使用される排卵誘発薬で、脳下垂体に働きかけ、卵胞の成長を促進。
利点 | 排卵率の向上、発育卵胞増加などで妊娠率が向上。 |
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注意点 | 子宮内膜非薄化、頸管粘液減少、多胎率増加(5%前後)。 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を起こす可能性が極めて稀にあり。 |
内服法 | 月経周期3~5日目から1日1~2錠、5日間が原則。 |
2. フェマーラ(一般名:レトロゾール)(内服薬)
・エストロゲン産生に関与し、排卵誘発を促進。
利点 | 子宮内膜非薄化、頸管粘液減少作用が少ない。 |
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注意点 | クロミフェンと比較し排卵誘発作用が弱い。 多胎率やや増加(1~5%前後)など。 |
内服法 | 月経周期3~5日目から1日1~2錠、5日間が原則。 |
3. セキソビッド(一般名:シクロフェニル)(内服薬)
・排卵誘発薬の一種で、脳下垂体に働きかけ、卵胞の成長を促進。
利点 | 子宮内膜非薄、頸管粘液減少作用が少ない。 OHSSを起こす可能性は極めて稀。 |
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注意点 | クロミフェンと比較すると排卵誘発作用が弱い。 多胎率増加(1~5%前後)など。 |
内服法 | 月経開周期3~5日から1日4~6錠、7~10日間が原則。 |
4. フォリルモンP75(精製-FSH:卵胞刺激ホルモン製剤)(注射薬)
・内服薬で効果が認められない場合、直接卵巣を刺激するために使用。
利点 | 排卵誘発作用が強い。使用量を調節し低刺激~高刺激が調節可能。 |
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注意点 | OHSSの発症が経口薬より高い。多胎率増加(20%前後)など。 |
使用法 | 月経周期3~5日から1~5回、反応性により投与回数決定。 |
排卵を誘起する薬剤
・排卵誘発剤で発育した卵胞の排卵を誘起するのに使用されます。
1. HCG5000F(尿由来hCG)(注射薬)
・頻繁に使用される排卵の誘起薬で、黄体機能も高める。
利点 | 排卵を誘起する確実性が高い。 排卵予測日から逆算してタイミング法の日程が組める。 |
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注意点 | 排卵誘発剤(特にFSH)併用時に卵巣過剰症候群の発症が稀にある。 |
使用法 | 注射後36時間前後に排卵を誘起。排卵間近では更に早まる。 |
2. オビドレル(遺伝子組み換え型hCG)(自己注射薬)
・遺伝子組換え型製剤で純度が非常に高く、組織刺激性が低い。
利点 | 自宅で実施でき、排卵予定日から逆算してタイミング法の日程が組める。 人工授精の場合、排卵予定日から逆算して自宅で注射する事が可能で、より精度の高い人工授精が実施可能。 |
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注意点 | 自己注射で習熟が必要。費用が相対的に高い。 |
使用法 | 注射後36時間前後に排卵を誘起。排卵間近では更に早まる。 |
3. ブセレリン(一般名:GnRHアゴニスト)(点鼻薬)(自費)
・短期使用で排卵の誘起を促進。
利点 | 自宅で実施できるため、来院の必要が無い。注射の苦手な方に使用。 |
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注意点 | hCGと比較すると排卵の誘起作用が弱い。 一般生殖治療では保険適応外自費。 |
使用法 | 左右鼻腔に各1回噴霧後、36時間前後に排卵を誘起。排卵間近では更に早まる。 |
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
- ・排卵誘発剤に続く排卵誘起する薬剤使用後(特にFSH注射+hCG注射)後に、極めて稀ですが卵巣腫大、重度腹痛、腹部緊満、腹水・胸水を伴う卵巣過剰刺激症候群、それに伴う呼吸困難、肺水腫、血栓症、脳梗塞、卵巣破裂などが発生する事があります。
- ・注射後、下腹痛、下腹部緊満感、悪心、腰痛を含む異常な症状が発生した場合は、直ちに高次医療機関へ紹介し治療を実施します。
- ・発症予測は、現在の医療水準では不可能です。
排卵誘発剤に関連した黄体補充薬剤(黄体ホルモン)
- ・排卵誘発剤を使用した場合の黄体補充療法に使用することがあります。
- ・下記2剤の妊娠率は同等と言われています。
- ・内服法:排卵2日後から1日1~3錠、12日間内服が原則。
1. デュファストン(一般名:ジドロゲステロン)(内服薬)
- ・基礎体温上昇作用が無い。
- ・より天然型黄体ホルモンに近い構造。
2. ルトラール(一般名:クロルマジノン)(内服薬)
- ・基礎体温上昇作用がある。